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一般社団法人アルパインクライミング推進協議会
設立趣意書

我が国でのいわゆる近代登山が明治中期に始まって以来、それまでの宗教や生業のために山を登る行為とは一線を画したこのスポーツは、「科学的知識の発展のためというより、遊びとしてやる価値がある」(1857年英国「アルパイン・クラブ」発足時の文言より)ものとして、大いに発展してきました。

 

そしてこのスポーツとしての登山は、その発展の当然の方向性として、一般登山の広がりとともに、さらなる高みや困難を目指す海外登山や、国内山岳地域でのロッククライミングという形でも、大いに発展してきました。これら漸進的な登山には、それぞれに先人たちの苦労や相応の深い歴史があり、個人の遊びに留まらず、世代を超えて受け継がれる「文化」としての域にまで達しています。実際、2021年、フランスではヨーロッパアルプスでのこうした行為=アルパインクライミングが、ユネスコにより無形文化遺産としても正式登録されるに至っています。

 

一方、こうした山岳地域でのクライミングには、自然を相手にしたスポーツとしてのそれなりのリスクもあり、それは幾多の事故や遭難などに残念ながら表れています。それゆえこうした先鋭的登山は時として社会的に迷惑な行為と捉えられることもあり、そのジレンマに我々は長年心を痛めてまいりました。

 

また、クライミングの対象となる岩場の多くが自然公園(国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園、自然公園法第2条第1号)内にあるため、その利用に関して正々堂々と自信を持って利用することができず、それゆえこのスポーツの社会的認知の向上や広がりを、自ら躊躇してしまうこともしばしばでした。そしてそうしたネガティブな意識がこのスポーツの健全な発展を時に妨げ、それが結果、多くのクライマーたちの安全性を低迷させる要因になっていることも、また事実であるように思えます。

 

そうした現状、ある意味負の連鎖ともいえる状況を打破するため、今回我々はこうした山岳地域でのクライミングというスポーツを社会に広く認知していただき、また自らの形もよりしっかりと整え、よりよい方向へ発展させていくための団体を立ち上げることとなりました。具体的な業務としては、岩場整備およびその周辺の整備と環境保全、それに伴う岩場地権者(管理者)との折衝、地元山岳団体への支援、一般クライマーへの情報提供および安全登山の啓発、などを予定しています。

 

団体構成員は長年このスポーツに心血を注いできたアルパインクライマーを中心としており、このスポーツへの確かな見識、のみならず国内クライマーへの影響力、発信力も優れたものがあります。

 

以上のことがクリアになり、クライマーはじめすべての登山者が正々堂々と、心おきなく真の自然と接することができるようになった時、歴史あるこのスポーツは、「環境の時代」と呼ばれる今日、その面でも大きな役割を果たせるであろうと確信しております。

一般社団法人アルパインクライミング推進協議会

発起人 / 代表理事

菊地敏之​

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